奄美大島旅行記




細川家家族(ダンナ、嫁さん、うた)での旅行を計画していたところダンナの希望で奄美大島に決定した。決定して数日後、嫁さんの妊娠が発覚。「別にいいじゃん奄美行こうよ」と簡単に言うダンナだが、嫁さんは大事を取ることになり、久しぶりのダンナ一人旅になってしまった。季節は12月、奄美大島は暖かいだろうがやはり冬、ダンナが楽しみにしている自然系は期待できないかもしれない。出発するダンナの見送りに愛娘うたも来てくれたが「パパ、バイバーイ」と素っ気無い。お父ちゃんの方が泣きそうだよ。屋久島から鹿児島空港そして奄美大島と飛行機に揺られる。鹿児島へ向かうときも飛行機の窓から屋久島を見て、鹿児島から奄美へ向かうときも飛行機から屋久島を見る。何んだかとても無駄をしている気がするが高度が違うので景色も違って見えるので良しとする。



鹿児島から1時間ほどだったろうか、あっという間に奄美に着いた。空港は冬でも南国ムード、腹が減ったので空港のレストランで飛行機を見ながら郷土料理セットを食す。一人旅って忘れていた感覚で懐かしい。さーてバスに乗って名瀬に行くかとバス停に行くとバスはしばらくやって来ないので空港売店を物色、やはり沖縄に近いだけあって鹿児島と沖縄が混ざった食文化が伺える。見ててとっても楽しい。



バスに乗り、「ここ奄美パークがあるのか」「おっ原ハブ屋奄美か」などついた日は色々とリサーチすることにしていた。だんだん名瀬市に近づいてくると屋久島とは比べ物にならないほど都会だとわかる。そー言えば鹿児島ローカルのニュースでたまに奄美で殺人事件がとか強盗がとか言っていたっけ。ダンナは少しビビリが入る。バスの終点で降りてすぐの場所に今回お世話になる「たつや旅館」がある。名瀬繁華街から近く奄美の夜を楽しむためだ。早速、部屋に案内され荷物を置き、昼間の名瀬を散策。夕食を食べる予定の「かずみ」の場所もチェック。町を歩く高校生も都会っぽく見える。そんな名瀬で出逢ったのが奄美三線のお店でおじさんとの話しに夢中になってしまった。沖縄三線とは弦が違うのとつめの代わりに竹の棒を使う。弦と竹棒?を購入し宿へ戻ると部屋から荷物が廊下に出してある。何でだよーと思ったら宿のご主人が「すいません。急に泊り客が増えて細川さん部屋を移ってください」とのこと、どうせ一人だしどこでもいいや。その部屋は道路に面していた。それが後に辛い事となるのは知るよしもなかった。その日の夕飯はほかほか弁当とオリオンビール。今夜はエコツアーに参加するのだ。奄美といえばハブ、そして絶滅危惧種などの貴重な生物を見ることができるのだ。狙いはもちろんアマミノクロウサギだ。夜七時頃にガイドさんが迎えに来てくれた。昼間歩いた町も夜は方向感覚もわからなくなる。人気の無い林道をスポットライトを照らしながらゆっくり車で走る。何が出てくるのかドキドキなんです。たまに車から降りてリュウキュウコノハズク(ふくろう)やアマミヤマシギなどに出逢う。クロウサギの姿は現れない。「ここウサギの通り道なんですよ」確かに茂みに穴らしきものがあったり土が出ている。「車下りていいですか?」「別にいいですけど、足元注意してくださいね。ハブがいるかもしれませんから」そうだ奄美はハブが多いのだった。下りてみると、道にはクロウサギの糞が沢山落ちている。ウサギの糞を手にとって匂いを嗅いで見るとやさしい奄美の香りがした。結局、クロウサギには逢えなかったがガイドさんのお話を聞けたので良しとしよう。時期が悪かったのだ。



奄美では一番高い湯湾岳と金作原コースといっても奄美大島はとても広いので良いとこ取りの贅沢な島内観光コースだった。始めに山間部の広い場所でバードウォッチングをした。ルリカケスやカラスバトを観察することができた。続いてマングローブ林、屋久島には無いオヒルギが群生していた。屋久島では体験できない景色に感動する。おみやげに川岸に流れ着いたサキシマスオウの種を拾って帰った。ツアーの中にお昼ご飯が付いていて昨日はクロウサギが見れなかったのでお昼を奮発してくれました。入ったお店の中で一番高い郷土料理セットでした。奄美の郷土料理はおいしいので飽きずに食べることができます。車に揺られ物凄い眠気に襲われるが寝てしまうのがもったいない。湯湾岳はふもとからの登山もできるが車で山頂付近まで行くこともできる。ダンナは車で山頂付近まで行ってから階段を登りあっという間に頂上。流石に照葉樹の森は見事。たまに鳥が上空に出ては森の中に戻っていく。植物も屋久島に似ていてツチトリモチやサクラツツジ、ヤクシマスミレなどが見られた。最後に金作原に向かう。金作原は林道になっていて車で進む金作原だけゆっくり徒歩で周っても良いなと思う奄美らしい森でした。ヒカゲヘゴの姿が見事です。少し林道をずれて森に入るとオキナワウラジロガシの大木。見事な板根でした。



オヒルギのマングローブは冬といってもオサガニなどの甲殻類が顔をだしてくれました。夏ならばもっと楽しいのに。



金作原は1日かけてのんびりと散策してみたい森でした。とても短い林道ですがじっくり味わって生態系を観察して欲しいです。



奄美の郷土料理は体によさそうでうまい。食文化も楽しめるので飲み屋のはしごなんかもお薦めです。

夕食を食べに行くと伝えると宿のご主人が「かずみ」に予約を入れてくれた。奄美には沖縄のようなライブハウスは少ないので普通の料理屋さんに入ると女将さんや常連客の中に三線のめちゃめちゃうまい人がいて料理屋で突然民謡ショーが始まっちゃったりするのです。女将の西和美さんは唄者でCDなんかもでている奄美では有名な唄者。かずみさんが作る郷土料理もお任せ2000円から2500円で大満足のボリューム。そこで思わぬ出逢いがあった。以前屋久島で魚類レッドデータブックの調査でご一緒した方とかずみでバッタリ。その方はかずみの常連で中心となって三線を弾いていた。三線に聞き入っていると携帯が鳴った。嫁さんからだ。出ると三線の音が聞こえるというのでそのまま聞かせてあげた。本当は家族で来たかったね。郷土料理の油ぞうめん、苦瓜味噌、煮物、もずく、なかでももずくのおいしさに感動。沢山おかわりをしてしまいました。おいしい黒糖焼酎をくださいというと「里の曙」が出てきた。黒糖焼酎最高。

お金も心細くなってきたのでレンタカーで周ることにした。奄美パークと原ハブ屋(奄美北部)を中心にのんびりするつもりだ。まず奄美パークに入ると誰も観光客らしき人影は無い。貸しきり状態で総合展示ホールで自由気ままに奄美の歴史に触れる。CGや原寸大模型など(原寸大の家に原寸大模型のおじいちゃんが縁側で民話を話してくれる)すどおりするのはもったいないと心行くまで楽しむ。奄美シアターでは普段の美しい奄美や季節の美しさを映像で味わった。なにせ今回は到着日は晴れ暑かったがそれ以降はとても寒く曇りか雨なのです。もっとも楽しみにしていた田中一村美術館では鳥肌が立つほど一村の生き様を感じた。お土産やさんでは奄美の昔話などの書籍を購入した。午前中いっぱい楽しんだのでお腹がすいてきた。もう何度か鶏飯を食べたが「元祖鶏飯」を食べなければと急いで「みなとや」へ向かう。午後1時半を過ぎてしまった。あった「みなとや」を発見。ジャングルのようなたたずまいというか人気が無い。もう閉店してしまったのだろうかと恐る恐る店内に入ると。誰もお客さんがいない。「すいませんまだ食事できますかー」声をかけると「ハイハイー」と奥から店員さんの姿が見えてホッとしました。今まで食べた鶏飯に比べるとかざりっけが無く昔ながらという感じ。しかもメニュー表に鶏飯のおいしい召し上がり方なる正しい作法が書かれていた。普段は賑わっているのだろうが一人で落ち着かないので早々に次の目的に移る。楽しみにしていた原ハブ屋のハブショー。ハブショーといってもマングースと戦わせるような恐ろしいショーではなく「ハブと愛まショー」というメッセージあふれるまさにエコショーなのです。またもやダンナ一人の貸切ショー。とっても勉強になったし、ハブと地元の人との付き合い方やハブの捕まえ方など一番驚いたのがハブを捕まえる器具を発明したのがショーをしてくれるおじさんの父さんということが印象に残った。今度奄美へ行くことがあったらこの器具を買おうと心に決めた。ショーの最後は暗闇になりしばらくすると上から蛇に見立てたロープが落ちてきてダンナの悲鳴で幕が閉じました。最後まで楽しませてくれる素晴らしいショーでした。皆さんも是非体験してください。渋滞に巻き込まれ宿に着く頃は七時過ぎ、今晩の夕食ももちろん「かずみ」で奄美の夜を楽しみましたよ。



万年筆みたいなのは鰆(さわら)をおびき寄せる漁具で釣る訳ではなく、船の上からもりで突く伝統漁法なのです。



みなとやのたたずまい。ひとりで落ち着かなかったので早々と食べてしまった。

ハブだけでなく、奄美大島に生息する蛇はほとんど見せてもらうことができた。毒はなくとも気性の荒いアカマタは共食いをする蛇でハブを食べることもあるとか?ハブの骨や皮を使ったオリジナルお土産も売っています。

昨日の晩というか毎晩、名瀬市繁華街の宿に泊まっているため、早朝の四時くらいまで人の声や車がうるさい。屋久島の静かな夜に慣れてしまっているのでとても寝不足。今日1日めいっぱい遊んだら明日は屋久島へもどるので眠気なんかに負けていられない。早速、朝からレンタカーで飛び出す。龍郷町を満喫するのだ。まず奄美大島紬村で泥染め体験。またしても一人しか参加者がいない。申し込みを済ましてまっさらなTシャツを購入していざ体験。とその前に大島紬のいかにも熟練された風貌の職人さんが親切に説明してくれた。職人さんがかっこよすぎです。泥染めしたときに模様を出すために糸でこのやろ、このやろと巻き巻きしていき「シャリンバイのチップ煮汁」で何度も漬ける。見る見る赤紫色に染まる。そして色を鮮やかに定着させるために田んぼのような泥水で何度も洗うのだ「うおーっ」赤紫色だったのが深い青に変わってしまった。。流石に自然が豊かで泥水の中にシリケンイモリが生息しているのだ。それも無数に。水溜りがあると歩いてくるという。夕方になるとオットンガエルというでかいカエルがオヤジのようなうめき声で鳴くという。体験はほぼ終了で最後の洗いを一生懸命何度も何度もしてくれた。その間に大島紬の工程を工房を巡りながら説明してくれました。糸のうちから模様をつくるというとても繊細な伝統の技を感じた。そんなものを見せられたダンナはもちろん大島紬が欲しくなってしまうのだが(十五万ほどで着物が買える)今回の一人旅は嫁さんからのプレゼントみたいなものなのでここは我慢。後ろ髪を引かれながらTシャツを受け取りに行くと、「おーなかなかいいじゃないですか」自分で染めたものなのに出来栄えに感動。早速明日は屋久島に着て帰ろう。泥染めに大満足してお次は奄美自然観察の森へGO。だんだん人気の無い道に迷っていく感じ。その不安をあおるようにガソリンがEに近づいていく。行けども行けどもガソリンスタンドが無い。止まったら助けてもらうにも人っ子一人いない。マジやばいと遠くを見るとガソリンスタンドがでもめちゃめちゃ小さいし民家のおまけといったたたずまい。車を止めても誰も出てこない。「すいません助けてください」とガラス戸を叩くとおばちゃんが出てきてくれた。「お休みなのにすいませんガソリンが切れそうなんです」と泣きそうなダンナに「休みじゃないわよ。このへんは人が少ないからみんなお兄ちゃんみたいに呼ぶんだよ」ダンナは力が抜けてしまったがおばちゃんと話をして不安を紛らわす事ができた。満タンになった車に怖いものは何も無い。どんどん山道に入っていく、訳もわからぬうちに奄美自然観察の森にたどり着いた。やはりそこにも誰もいない。ルリカケスやアカヒゲなどの珍しい鳥も身近に観察できる素晴らしき森。木道も付いているがやたらと滑るし腐っている場所もある。しかし、その森の静けさと空気は屋久島を思い出した。奄美では珍しいのではないかと勝手に思っているが屋久島のような霧が立ち込めて幻想的。ちょっとしたアスレチックコースがあったので子供のように楽しんでしまった。人工的な小川も流れていてそこにもシリケンヤモリがいた。こんな身近に良い森があるのは奄美の財産です。十分トレッキングを楽しみ。地図なんかどうでもよくなってしまい適当に峠を越えたり海岸沿いをドライブしていると突然漁港らしきものが見えてきた。「かっ、かつおだ」漁港に鯉のぼりではなく、鰹のぼりが泳いでいるだ。車を止めてみると、取れた手の魚を売っている様子。早速五百円の山盛りキハダマグロの刺身を買う今晩の飯は質素のはずが安く贅沢なものとなった。

屋久島に帰ってから洗濯をしたら、他の衣類もピンクに染まってしまったので嫁さんにしかられました。



シリケンイモリは奄美近辺の島にしかいない貴重なイモリ。道路を横断している姿もたびたび見ました。



オリオンビールも二種類あるし、ほか弁ですが豪勢な最後の晩餐となりました。本当は郷土料理かずみに行きたかったのですがキハダマグロの刺身を山盛り食べて早く休みました。

奄美大島の印象はダンナのような一人旅にとてもやさしい島でした。是非夏のベストシーズンに訪れてほしい島です。もちろん海も楽しめるしカヌーも気持ちが良い。生き物はクロウサギをはじめ宝石のようなイシカワガエル、アカショウビンなどを見る確率がアップ。とは言え、冬でもやたらと楽しんだダンナです。今回は奄美南部には行くことができませんでしたが十分満足です。

屋久島に帰ると娘のうたは本当はお父ちゃんがいなくて寂しかったらしく、夜、急におきて「おとうちゃぁーん」と絶叫して嫁さんが抑えきれないほど暴れたことを聞きました。ごめんねうーちゃん。おとうちゃんだってみんなと離れて寂しかったんだよ。今度はみんなで奄美に行こうね。

旅行記TOP
移住奮闘記TOP